ネイルサロン開業の際、サロン事業の話に目が行きがちです。しかし、ネイルサロンに限らず、個人事業主として開業をする際は、リスクを正しく把握することが大切になります。本記事では、1人でネイルサロンを開業した場合に起こりえるリスクを3つ紹介します。本記事を参考に、いざというときのために備えましょう。
万が一働けなくなった際に保証がない
個人事業主にとって最大のリスクは、働けなくなることです。このリスクは病気や事故によって誰にでも発生する可能性があります。しかし、個人事業主は従業員とは異なり、雇用保険や労災保険に加入できません。
一方で、雇用されている人々は、正規雇用であれ非正規雇用であれ、雇用保険や労災保険に加入できます。個人事業主が雇用保険に加入できないため、働けなくなった場合に手当を受け取れません。
とくに、一人サロンの場合、自分が入院している間にも借入金の返済や家賃の支払いの経済的な負担が発生し、事業の維持が難しくなります。さらに、お店を閉めても失業手当が支給されないため、新たな就職先を見つけるまでの期間は収入が途絶えます。
また、個人事業主は国民健康保険に加入するのが一般的ですが、会社員や共済組合の健康保険に付随する傷病手当金の給付は受けられません。個人事業主、とくに一人サロン経営者の場合、自らが働けなくなると収入がゼロになるため、保障が不十分であるのは明らかです。
したがって、個人事業主は自らが働けなくなった場合を想定し、リスク管理を十分に行う必要があります。一環として、民間の保険などの利用も検討すべきです。
たとえば、収入保障や入院給付といった補償を提供する保険に加入すると、万が一の場合にも経済的な安心を得られます。経済的リスクを最小限に抑えるために、十分な準備と対策が肝心です。
老後に受給できる年金が少なくなる
個人事業主にとって、老後の年金に関する不安はリアルなものです。会社員と比べると、個人事業主は将来の年金受給額が少なくなります。会社員は国民年金に加えて厚生年金が上乗せされる一方で、個人事業主は国民年金のみが適用されます。
したがって、会社員の方が将来の年金額が多くなる傾向にあります。さらに、個人事業主の場合、扶養家族の年金にも影響が及びます。会社員であれば、扶養に入っている配偶者は「第3号被保険者」として保険料を支払う必要がありません。
しかし、個人事業主の配偶者はこの特例の対象外であり、国民年金の保険料支払いが不可欠です。たとえば、専業主婦である配偶者でも、個人事業主である自身の扶養に入れず、配偶者もまた国民保険を支払う必要があります。
結果として、実質的には2人分の保険料を支払います。このような将来の収入不安に対処するためには、公的基礎年金に加えて上乗せできる仕組みを活用するのが重要です。たとえば、確定拠出年金(iDeCo)に加入して、毎月少額ずつ掛け金を支払い、将来の収入を増やせます。
また、個人事業主やフリーランス向けに設立された国民年金基金や小規模企業共済の制度も積極的に活用すべきです。これらの制度は、個人事業主の収入を補完し、老後の生活を安定させるための手段として有効です。将来の不安に備え、適切な計画と対策を立てるとよいでしょう。
ローン借り入れの審査が厳しくなる
個人事業主として働くことは、会社員としての働き方と比べて、公的な支援を受けにくい側面があります。この点が、社会的な信用にも影響を及ぼす可能性があります。
実際、フリーランスの美容師などから「車のローンが通らなかった」という相談を受けるときがあります。原因として「収入の不安定さ」が挙げられるケースがあります。
確かに、会社員として働く場合と比べると、個人事業主としての収入の不安定さがローンの審査ハードルを高くする要因となり得ます。ただし、すべての個人事業主にとってローンが通らないとは限りません。
実際に、ローンが通ったケースもあります。要は、事業の安定性や信用度など、さまざまな要因が審査に影響するため、必ずしも絶対的な結果はないという点です。個人事業主としての開業は、周囲の人々にも影響を与えます。
とくに家族にとっては、その影響が大きいでしょう。したがって、開業を考える際には、家族がどのような影響を受けるかを十分に想定するのが重要です。たとえば、家を購入したいと考える場合、住宅ローンの審査も考慮しなければなりません。
個人事業主としての収入の不安定さが審査に影響する可能性があるため、配偶者と共に負担する必要があるかもしれません。そのため、雇用されている間に家を購入するかを検討する方が賢明な場合もあります。
リスクを認識し、家族との話し合いを通じて理解を得た上で、個人事業主としての開業を検討すべきです。家族との協議や理解を得ると、将来のリスクに対処するためのサポートを得られます。
まとめ
ネイルサロンを1人で開業する際には、さまざまなリスクが存在します。まず、自身が働けなくなった際の保障が不足している点が挙げられます。個人事業主は雇用保険に加入できないため、病気や事故により働けなくなった際の手当が得られません。とくに一人サロンの場合、経済的な負担が大きくなり、事業の維持が難しくなります。また、老後の年金受給額が少なくなるリスクも考慮すべきです。個人事業主は国民年金のみを受け取るため、将来の収入が不安定になります。さらに、ローンの審査が厳しくなる可能性もあります。収入の不安定さが審査のハードルを上げるため、家族や配偶者との話し合いを通じて、開業の際のリスクを共有し、計画を立てることが重要です。リスクを認識し、適切な対策を講じることで、ネイルサロンの開業を成功させるための準備を整えましょう。